コピーライティングの心理学|お客様の心と感情を理解する極意

コピーライティングの心理学|お客様の心と感情を理解する極意

コピーライティングの心理学とは、お客様が何に悩み、何を望み、どんなときに心が動くのかを知って、それを伝え方に生かすことです。よく「心理テクニック」として紹介される損失回避(得より損を大きく感じる心の動き)や希少性(手に入りにくいものほど、ほしくなる心の動き)なども、お客様をせかしたり、だましたりするための道具ではありません。お客様の心と感情を理解して、正しく伝えるための手がかりとして使うものです。

この記事では、マズローの欲求5段階説(人の欲求を5つの段階に分けて考える理論)、認知バイアス(損失回避など、人が判断するときの考え方のくせ)、選択的注意(関心のあることほど目に入る心の働き)という心理学の考え方と、それをコピーに生かす書き方を、例文とエクササイズつきで解説します。

例文の商品や数字は、書き方を見せるための例です。使うときは、あなたの商品で本当に言えることに置きかえてください(「○」は、実際の数や日付を入れる印です。その事実がないときは、その文ごと使いません)。

【2026年9月の更新】この記事は2024年3月に書いたものです。「効果的なコピー」として紹介していた例文の中に、広告の決まりに照らして問題になりうるもの(サプリメントで病気の予防をうたう例、化粧品の効き目を大きく言う例など)や、強い言葉を足すほど心に響くとする説明があったため、事実で書ける例文と、具体的な言葉を選ぶ説明に差し替えました。あわせて、マズローの欲求5段階説、損失回避、RAS(網様体賦活系)の説明を、原典や研究の資料に合わせて訂正し、エクササイズとまとめも見直しました。

目次

1. はじめに:コピーライティングに必要な「人間心理」の理解

光の粒に包まれた女性の横顔のイラスト(人の心と感情のイメージ)

あなたは「コピーライティング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

コピーライティングとは、商品やサービスの魅力を最大限に引き出し、お客様の心に響く言葉を紡ぎ出すことで、購買意欲を高める技術のことです。

しかし、実際にコピーライティングに挑戦してみると、なかなか思うような結果が出ないという方も多いのではないでしょうか。

文章力の問題でしょうか?

キャッチコピーが弱いのでしょうか?

いえ、そうではありません。

実は、コピーライティングで最も重要なのは「人間心理」の理解なのです。

お客様がどのような心理状態で商品を見ているのか、どんな感情を抱いているのか。

それを理解することが、効果的なコピーを書くための第一歩なのです。

世の中には、心理学の本や記事があふれています。

しかし、難しい理論をすべて覚える必要はありません。

大切なのは、お客様の気持ちに寄り添うこと。

共感の目線を持つことなのです。

このブログ記事では、コピーを書くのに役立つ「人間心理」の基本を、わかりやすくお伝えしながら、それをどのようにコピーライティングに活かすことができるのか、具体的に解説していきます。

マーケターやビジネスオーナーの方はもちろん、これからコピーライティングを学びたいという方にもぜひ参考にしていただければと思います。

ぜひ最後までお付き合いください。

この記事で紹介する6つの心理学の考え方(早見表)

この記事で紹介する心理学の考え方と、コピーでの使い方を、先に一覧で見ておきましょう。

心理学の考え方どんな
心の動きか
コピーでの
使い方
マズローの
欲求5段階説
人の欲求を5つの段階に分けて考える。下の欲求がある程度満たされると、次の欲求が現れる商品が、お客様のどの欲求に役立つのかをはっきりさせる
損失回避同じ金額なら、得たときの喜びより、失ったときのつらさのほうが大きく感じられる今のままだと続く困りごとを、大げさにせず、お客様の言葉で書く
フレーミング
効果
同じ内容でも、言い方(枠組み)によって受け取り方が変わる事実は変えずに、お客様に伝わりやすい言い方を選ぶ
現在バイアス先のことなら待てるのに、目の前の小さな得を選んでしまいやすい成果の約束ではなく、すぐに始められること・すぐに受け取れるものを書く
希少性手に入りにくいものほど、ほしくなる期限や人数の上限は、本当にあるときだけ、日時や理由と一緒に書く
選択的注意たくさんの情報の中から、一部を選んで注意を向ける。関心のあることには気づきやすいお客様が悩みを話すときの言葉を、見出しや書き出しに使う
それぞれの考え方は、この記事の2〜4章でくわしく説明します。

2. 人間の欲求を理解する:マズローの欲求5段階説

マズローの欲求のピラミッドの図(下から生理的欲求・安全欲求・社会的欲求・承認欲求・自己実現欲求)

コピーライティングを学ぶ上で外せないのが、「マズローの欲求5段階説」です。

アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、1943年に心理学の専門誌『Psychological Review』に発表した論文「A Theory of Human Motivation(人間の動機づけの理論)」で示したこの理論は、人間の基本的な欲求を5つの段階に分けたものです。

下から順に、

  1. 生理的欲求(食欲、睡眠欲、性欲など)
  2. 安全欲求(安全、安定を求める欲求)
  3. 社会的欲求(所属、愛情を求める欲求)
  4. 承認欲求(自尊心、認められたいという欲求)
  5. 自己実現欲求(自分の力や可能性を発揮したいという欲求)

という順番です。上の図のように、ピラミッドの形で紹介されることがよくあります。

※ ピラミッドの図は、マズロー本人が描いたものではありません。マズローの著作や資料を調べた2019年の研究(ブリッジマンら)では、本人がピラミッドの形で示した跡は見つからず、1960年にアメリカのビジネス誌の記事で使われた図が、最も早いものとみられています。この記事でも分かりやすさのために図を使っていますが、段階の区切りは、図ほどはっきりしたものではありません(このあと説明します)。

欠乏欲求と存在欲求

欠乏欲求(生理的欲求〜承認欲求)と存在欲求(自己実現欲求)を示した、マズローの欲求のピラミッドの図

この5段階の欲求は、大きく「欠乏欲求」と「存在欲求」の2種類に分けて説明されることがあります。マズローが後の著書『完全なる人間』(原書の初版は1962年)で、足りないものを満たそうとする「欠乏動機」と、自分を伸ばそうとする「成長動機」を分けて論じたことにもとづく分け方です。

下位4つの段階(生理的欲求〜承認欲求)は「欠乏欲求」と呼ばれます。

これらの欲求が満たされていないと、人は不安やストレスを感じ、それらを満たそうとする行動を取ります。

一方、最上位の自己実現欲求は「存在欲求」と呼ばれます(「成長欲求」と呼ばれることもあります)。

これは、自分の理想や可能性を追求し、より良い自分になろうとする欲求です。

下位の欲求がある程度満たされると、上位の欲求が現れる

マズローの理論で重要なのは、下位の欲求がある程度満たされると、次の上位の欲求が現れてくるという点です。

例えば、生理的欲求がある程度満たされている人は、次に安全欲求を求めるようになります。

安全欲求もある程度満たされれば、今度は社会的欲求が芽生えてくるのです。

「ある程度」というのは、100%満たされてから次の欲求が現れるわけではない、という意味です。マズロー自身、1943年の論文で、多くの人は、どの欲求もある程度満たされながら、同時に満たされていない部分も持っている、と書いています。説明のための仮の数字として、平均的な人は、生理的欲求が85%、安全欲求が70%、愛情の欲求(社会的欲求)が50%、自尊心の欲求(承認欲求)が40%、自己実現欲求が10%ほど満たされている、という例も挙げています。

また、マズローは同じ論文で、この順番は、それまでの自分の説明から受ける印象ほど固定したものではない、とも書いています。愛情より自尊心を大切にする人のように、順番が入れかわる例外があるという説明です。

その後の研究にも、欲求の順番をそれほど厳しく考えなくてよいことを示す結果があります。たとえば、123か国のデータを使った2011年の研究(テイとディーナー)では、ある欲求が満たされていることと幸福感との結びつきは、ほかの欲求(下の段階の欲求も含みます)が満たされているかどうかに、あまり左右されませんでした。

コピーを書くときは、「人はこの順番で必ず動く」と考えるより、「このお客様は今、何を満たしたいのか」を考える手がかりとして使うのがよいでしょう。

コピーライティングに活かすマズローの欲求5段階説

では、この理論をコピーライティングにどう活かせば良いのでしょうか。

ポイントは、商品やサービスが顧客のどの欲求を満たすのかを明確にすることです。

例えば、生命保険の広告であれば、「安全欲求」に訴求する(うったえかける)ことができます。

高級車の広告なら、「承認欲求」や「自己実現欲求」に訴求できるかもしれません。

講座や教室でも同じです。たとえば、料理教室なら「家族においしいものを食べてほしい」(社会的欲求)、資格の講座なら「仕事で認められたい」(承認欲求)、趣味の講座なら「好きなことをもっと深めたい」(自己実現欲求)のように、同じ「学ぶ場」でも、お客様によって満たしたい欲求が違います。

また、下位の欲求を満たすことが、上位の欲求を喚起することもあります。

「週末の1時間で、平日3日分のおかずを作り置きしておけば、その3日は、帰ってから夕食の準備に追われずに済みます(安全欲求:暮らしの安定)。だからその3日の夜は、家族と食卓を囲む時間にできます(社会的欲求:家族とのつながり)」

といった具合です。

なお、この記事では、健康食品や化粧品の効き目を例文にしていません。広告の決まりがとくに厳しい分野で、たとえば健康食品で病気の予防をうたうと、薬機法(薬や化粧品などの品質や広告の決まりを定めた法律)の問題になるおそれがあるからです。くわしくは、「売れるキャッチコピーの書き方|8つのテクニックとパワーワード一覧」の「キャッチコピーで気をつけたい広告の決まり」の章をご覧ください。

マズローの欲求5段階説を理解することは、顧客の深層心理を知る第一歩。

説得力のあるコピーを書くには欠かせない知識だと言えるでしょう。

次項では、人間の心理的な特性である「認知バイアス」についてお伝えしていきます。

3. 認知バイアス~人の判断は、気持ちや言い方に左右される~

目で見た四角い物が、頭の中の曲がりくねった線を通って丸い物として出ていくイラスト(認知バイアスのイメージ)

人間の心理を理解する上で欠かせないのが、「認知バイアス」という概念です。

認知バイアスとは、人が物事を判断するときに、無意識のうちに起こりやすい考え方のくせ(かたより)のことです。心理学者のエイモス・トヴェルスキーとダニエル・カーネマンが、1974年に科学誌『Science』に発表した研究がよく知られています。

私たちは、いつも筋道を立てて判断しているつもりでも、実際には、そのときの気持ちや、同じ内容の言い方の違いにも影響されています。

人は得るよりも失うことを避けようとする

認知バイアスの一つに、「損失回避」というものがあります。カーネマンとトヴェルスキーが1979年に発表した「プロスペクト理論」(先のことが分からない中で、人が得や損をどう感じて選ぶのかを説明する理論)の中心となる考え方の一つです。

これは、人は何かを得ることよりも、何かを失うことを避けようとする傾向が強いということを示しています。

論文では、同じ金額のお金を失ったときのつらさは、得たときの喜びより大きく感じられるようだ、と説明されています。1万円をもらううれしさより、1万円をなくすつらさのほうが大きい、というイメージです。

また、同じ内容でも、「今契約すれば1万円お得!」と言うか、「今契約しないと1万円損!」と言うかで、受け取り方が変わることがあります。このように、言い方(枠組み)によって判断が変わることは「フレーミング効果」と呼ばれます(トヴェルスキーとカーネマン、1981年)。

ただし、「損をしますよ」という言い方に変えれば、いつも反応が上がるわけではありません。健康のための行動をすすめるメッセージについて、「こうすると、こんな良いことがある」という言い方と、「こうしないと、こんな悪いことがある」という言い方の説得力を比べた研究が、数多くあります。

それらをまとめた分析(オキーフとジェンセン、2007年・2009年)では、どちらの言い方が上回った場合も、その差はごく小さいという結果でした。言い方を選ぶときは、事実は変えずに、お客様に伝わりやすいほうを選びましょう。

人は目先の得を選びやすい

板チョコレートをほおばる女性の口元(目の前の楽しみを選びたくなる気持ちのイメージ)

また、人は目先の利益や楽しみにひかれやすい傾向があります。この傾向は、行動経済学(人が実際にどう選ぶのかを、心の動きも含めて調べる学問)では「現在バイアス」と呼ばれます。先のことを決めるときは待てるのに、目の前に得や楽しみがあると、先の大きな得より目の前の小さな得を選んでしまいやすいことを指します。

長期的なメリットがあるとわかっていても、すぐに得られる利益の方に目が行ってしまうのです。

「ブログは毎日コツコツ書き続けることが大切」とわかっていても、「すぐに結果が出る」とうたう方法の方に心が動くのは、この心理が働いているからだと言えるでしょう。

コピーでよく見る「期間限定」「先着○名様」といった表現も、「今決めないと手に入らないかもしれない」と感じさせて、目の前の判断をうながす言葉です。心理学者のロバート・チャルディーニは、著書『影響力の武器』(日本語訳は1991年に刊行)などで、人を動かす原理の1つとして、こうした心の動きを「希少性」(手に入りにくいものほど、ほしくなる)と呼んでいます。ただし、本当に期限や人数の上限があるときにだけ使える言葉です(このあと説明します)。

コピーライティングに活かす認知バイアス

認知バイアスを理解することは、お客様の心に響くコピーを書くための大切な基礎となります。

例えば、商品の利点を伝えるときは、「得られるもの」だけでなく、「今のままだと続いてしまう困りごと」も書いてみましょう。

「講座にしたい知識があるのに、準備が進まないまま、半年が過ぎていませんか?」

というように、お客様がすでに感じている困りごとを、その人の言葉で書くと、「自分のことだ」と受け取ってもらいやすくなります。ただし、不安を大げさにあおる書き方は、かえって信頼を失うもとになります。

「期間限定」「先着○名」のような言葉も、本当にその条件で締め切るときだけ、「○月○日23時59分まで」「会場が20席のため、先着20名まで」のように、日時や理由と一緒に書きましょう。事実でない期限や人数を書くと、景品表示法(実際よりよく見せたり、得に見せたりする広告を取りしまる法律)などにふれるおそれがあります。

また、「すぐに得られること」を伝えるときは、成果の約束ではなく、すぐに始められること、すぐに受け取れるものを具体的に書くと良いでしょう。

「1日10分の音読を30日。登録した翌朝から毎朝メールで届く、英語の音読プログラム」

といった具合に、何を・どれだけ・いつから・どんな形で始められるのかを書くと、目の前の一歩が見えて、行動しやすくなります。

上達や成果までの期間(「1か月で上達」など)を書くなら、それを裏付ける資料が要ります。うまくいった人の感想を集めただけでは裏付けにならず、受講した人から偏りなく選んだ十分な人数について、書いた期間どおりに確かめた結果のような、客観的なものが必要です。根拠がないまま書くと、これも景品表示法などにふれるおそれがあります(くわしいNG例とOK例は、先ほど紹介したキャッチコピーの記事の「広告の決まり」の章にまとめています)。

認知バイアスを知っておくと、お客様がどこで迷い、どんな言い方なら誤解なく伝わるのかが見えてきます。

経済学者の大竹文雄氏は、2019年の日本行動計量学会の大会の要旨(「災害避難の行動経済学」)で、行動経済学の知見を使って人の行動をよりよい方向にうながすことを「ナッジ」、自分の得のために人の行動をうながしたり、よりよい行動をさせないようにしたりすることを「スラッジ」と呼ぶ、と紹介しています。コピーで心理の知識を使うときも、お客様をせかすためではなく、お客様がよい選択をできるよう、正しく伝えるために使いましょう。

次項では、ここまでの心理をコピーにどう生かすかを、言葉の選び方と、「関心のあることほど目に入る」という心の働き(「RAS」と呼ばれる脳の仕組みの働きとして説明されることもあります)から見ていきます。

4. コピーライティングに活かす人間心理

「WORDS HAVE POWER(言葉には力がある)」と書かれたライトボックス

マズローの欲求5段階説や認知バイアスを理解したところで、具体的にどのようにコピーライティングに活かせば良いのでしょうか。

ここからは、人の心を動かすための実践的なテクニックをお伝えしていきます。

強い言葉より、お客様の言葉と具体的な言葉を使う

言葉には、人の感情を動かす力があります。

「衝撃」「感動」のように、感情を強く揺さぶる言葉は、「エモーショナルパワーワード」と呼ばれることがあります。目を引く力はありますが、何がどう良いのかが見えないまま使うと、大げさで信用できない文章に見えてしまうことがあります。

例えば、

「“包丁を持つのがこわい”から始める、はじめての料理教室」

というコピーは、強い言葉を使っていません。それでも、お客様が実際に口にしそうな言葉をそのまま使っているので、同じ悩みを持つ人に「これは自分のことだ」と感じてもらいやすくなります。

「ブログの書き出しで、毎回30分手が止まる方へ。書き出しの型を10個まとめた電子書籍」

といった文章も、数字や場面を具体的に書くことで、読む人が自分の状況に重ねやすくなります。

感情に訴える言葉は、強さよりも、具体的であることが大切です。よく使われるパワーワードの一覧と、使うときの注意は、「売れるキャッチコピーの書き方|8つのテクニックとパワーワード一覧」にまとめています。

自分の興味あるものに敏感になる~選択的注意とRAS(網様体賦活系)~

光る脳と波形が描かれた、人の横顔のイラスト(脳の働きのイメージ)

人間の脳には、「RAS = Reticular Activating System(網様体賦活系 もうようたいふかつけい)」と呼ばれる仕組みがあります。

網様体賦活系は、脳の奥の脳幹を中心に、大脳へと向かう神経のネットワークです。目が覚めている状態(覚醒)を保つことや、眠りと目覚めの切りかえに関わっていて、注意や集中にも関係しています。1949年に、研究者のモルッツィとマグーンが考え方を示しました。

自己啓発やマーケティングの本では、RASを「興味のある情報だけを拾う、脳のフィルター」と説明することがあります。ただ、脳科学の辞典や医学の資料には、RASの働きとして、目が覚めている状態を保つことや、注意・集中に関わることは書かれていますが、「興味のある情報を選んで拾う」働きは書かれていません。

心理学では、たくさんの情報の中から一部を選んで注意を向ける働きを「選択的注意」と呼び、その仕組みを「フィルター」にたとえた考え方も研究されてきました。ほかの話を聞くことに集中していても、自分の名前が聞こえると、そちらの話に気づきやすくなる、という実験結果もあります。

例えば、新車の購入を考えている人は、街中で同じ車種を見かけたら、つい目で追ってしまうはず。

妊娠中の女性は、ベビー用品の広告が気になって仕方がなくなるでしょう。

これは、街を走る同じ車や、ベビー用品そのものが急に増えたのではなく、関心が高まったことで目に入りやすくなったためだと考えられます(ネットの広告は、見たサイトなどに合わせて表示されるので、実際に多く出ていることもあります)。

一度気になったものを、急にあちこちで見かけるように感じることは「頻度錯覚」と呼ばれます。言語学者のアーノルド・ツヴィッキーが2005年に名づけた言葉で、「バーダー・マインホフ現象」とも呼ばれます。

コピーライティングでは、この「関心のあることほど目に入る」という心の働きを意識することが大切です。

お客様が気にしている言葉、つまり悩みを話すときに実際に使う言葉を、見出しや書き出しに入れると、「これは自分に関係がある」と気づいてもらいやすくなります。

また、ターゲット顧客の抱える悩みや、達成したい目標をしっかりとリサーチし、文章に反映させることが重要。

そうすることで、まるでその商品が自分のために作られたかのように感じさせ、購買意欲を高めることに繋がります。

読者の興味や関心に合わせて、ターゲットを絞ったコピーライティング。

それこそが、高い成約率(読んだ人のうち、申し込む人の割合)を生み出す秘訣だと言えるでしょう。

次項では、お客様の感情に寄り添うコピーを書くためのコツについてお話ししていきます。

5. お客様の感情に寄り添うコピーライティングのコツ

雨に打たれてうつむく男性のモノクロ写真(悩みや不安を抱えた気持ちのイメージ)

具体的な言葉を選び、お客様の関心に合わせて書くことは、コピーライティングの基本です。

しかし、本当に人の心を動かすためには、もう一歩踏み込んだアプローチが必要不可欠。

ここからは、お客様の感情を理解するための、より実践的なコツをお伝えしていきます。

顧客の恐怖や不安、理想や願望を理解する

セールスライティングで最も重要なのは、顧客の感情に寄り添うこと。

特に、顧客の抱える「恐怖」「不安」と、顧客の「理想」「願望」を理解することが大切です。

顧客の抱える恐怖や不安としては、

「このままでは健康を損ねてしまうのではないか」

「今の生活で本当に満足できるのだろうか」

といったものが挙げられるでしょう。

一方、顧客の理想や願望は、

「もっと自由な生活を送りたい」

「家族との時間をもっと大切にしたい」

などがあるかもしれません。

これらの感情を深く理解し、共感することが、説得力のあるコピーを書くための第一歩となります。

そして、商品やサービスが、その不安を小さくし、理想に近づくためにどう役立つのかを、事実にもとづいて伝えること。

それが、お客様の心に届き、行動につながるコピーライティングの真髄なのです。

この「不安」と「理想」を、文章の流れに落としこむ型の一つが、PASTORフォーミュラです。最初のP(人物・問題・痛み)で、誰が何に困っているのかを書き、次のA(影響と理想)で、そのままだと何が続くのか、本当はどうなりたいのかを書きます。ここで考えたお客様の不安と理想が、そのまま材料になります(書き出し方は、6章のエクササイズで紹介します)。

私自身、セールスレターがなかなか書けずに悩んでいた2016年に、アメリカのセミナーでコピーライターのレイ・エドワーズ氏からこの型を学び、それ以来、セールスレターはこの型に沿って書いています(そのときのことは、上のPASTORフォーミュラの記事に書いています)。

言葉は心を動かす「心の通貨」

言葉は、人の心を動かす力を持っています。

コピーライターの仕事は、言葉を使って人の感情に訴えかけ、行動を促すこと。

ある意味、言葉は「心の通貨」だと言えるでしょう。

お金が経済を動かす通貨であるように、言葉は人の心を動かす通貨なのです。

だからこそ、一つ一つの言葉を吟味し、最適な表現を選ぶことが重要。

ただし、最適な表現とは、強い言葉のことではありません。「あなたの人生を劇的に変える」のような言葉は、目を引いても、何がどう変わるのかが伝わらないため、かえって信用されにくくなることがあります。

「便利な講座」よりも「1本10分の動画だから、通勤電車の中で1日1本ずつ進められる講座」のように、お客様の暮らしの場面が浮かぶ言葉の方が、心に届きやすくなります。

強い言葉を足すのではなく、お客様の暮らしが浮かぶ言葉を選び、読者の感情に語りかけること。

それが、人の心を揺さぶり、行動を促すコピーライティングの極意だと言えます。

次項では、これまでの内容を踏まえ、実際にどのようにコピーライティングの技術を磨くことができるのか、エクササイズ方法をお伝えします。

6. 実践編:人の感情に響くコピーを書くエクササイズ

ノートにペンで書きこむ手元(エクササイズのイメージ)

ここまで、コピーライティングに必要な人間心理の理解と、感情に訴えかけるための技術についてお話ししてきました。

しかし、これらの知識を実践に移さなければ、本当の意味でのスキルアップにはつながりません。

ここからは、実際に人の感情に響くコピーを書くためのエクササイズをご紹介します。

お客様が実際に使った言葉を書き出す

まずは、お客様が実際に使った言葉を書き出すエクササイズから始めましょう。

  1. 紙とペン(またはメモアプリ)を用意します。
  2. お客様からの質問のメール、アンケートの答え、講座の感想、SNSのコメントなどから、悩みや願いを表す言葉を、言いかえずにそのまま書き写します。
  3. 10分ほど時間を設定し、できるだけたくさん集めます。
  4. 時間が終わったら、集めた言葉を眺めて、何度も出てくる言葉に印をつけましょう。あなたのお客様の「言葉の辞書」の完成です。

このエクササイズを定期的に行うことで、お客様に伝わる言葉を選ぶ力を養うことができます。まだお客様の声が少ないときは、同じ悩みを持つ人が本のレビューや質問サイトに書いた言葉から集めてもかまいません(言葉の傾向をつかむためのもので、文章をそのまま広告に載せることはしません)。

コピーを書く際には、この中から、お客様の状況にいちばん合う言葉を選んで使ってみましょう。

なお、お客様の感想やメールの文章を広告や販売ページに載せるときは、ご本人の了承を得て、言葉を変えずに載せます。よい感想だけを選んで載せるなら、選んで載せていることが分かるように書きます。広告だと分かりにくい宣伝(ステルスマーケティング)は、2023年10月から景品表示法で禁止されています。

上達などの成果についての感想は、「個人の感想です」と添えるだけでは足りません。載せるなら、調べた受講生の数と、同じような成果が出た人・出なかった人の割合も一緒に書きます。

顧客の感情(恐怖、理想)を書き出す

次に、顧客の感情を理解するためのエクササイズです。

  1. 再び紙とペンを用意します。
  2. 対象とする顧客像を思い浮かべ、1つ目のエクササイズで集めた言葉も手元に置きましょう。
  3. 顧客が抱えているかもしれない「恐怖」や「不安」を列挙します。「高いお金を払っても、最後まで続かないかもしれない」「人前で話すのが苦手で、セミナーを開けない」など、お客様が口にしそうな言葉で、具体的に書き出しましょう。
  4. 次に、顧客が望んでいるであろう「理想」や「願望」を書き出します。「自由な生活」「家族との幸せな時間」など、ポジティブな感情を列挙します。
  5. それぞれ20個程度を目安に、思いつく限り書き出してみましょう。

このエクササイズを行うことで、顧客の感情を深く理解することができます。

そして、それらの感情に寄り添い、商品がどう役立つのかを事実で伝えるコピーを意識して書くことで、説得力の高いセールスライティングが可能になるのです。書き出した不安は、お客様を理解するためのものです。コピーで使うときは、大げさにあおらないようにしましょう。

強い言葉を、数字や場面に言いかえる

最後は、書いたコピーを見直すエクササイズです。「すごい」「たっぷり」「人生が変わる」のような強い言葉が入っていたら、次のように、数字や場面に言いかえてみましょう。

  • 「すごく簡単」→「手順は3つ。1つ目は、テンプレートに名前を書きこむだけです」
  • 「たっぷりの内容」→「動画24本(合計6時間)と、書きこみ式のワークシート12枚」
  • 「人生が変わる講座」→「最終回で、あなたの講座の販売ページを一緒に1枚作ります」

言いかえた数字や中身が、あなたの商品で本当に言えることかどうかも、あわせて確かめましょう。

これらのエクササイズを日々の習慣にすることで、あなたのコピーライティング力は少しずつ磨かれていくはずです。

ぜひ、継続的に取り組んでみてください。

7. まとめ:人間心理を理解し、共感を生むコピーライティングを

そっと手を重ね合う2人の手元(共感と寄り添いのイメージ)

これまで、コピーライティングに必要な人間心理の理解と、感情に訴えかける技術について詳しくお伝えしてきました。

マズローの欲求5段階説から認知バイアス、関心のあることほど目に入る「選択的注意」まで、私たちの感情や行動に影響を与える心理学の考え方の数々。

これらを深く理解し、言葉の持つ力を最大限に引き出すことが、人の心を動かすコピーライティングの基本です。

しかし、本当に大切なのは、テクニックではありません。

人間の感情に寄り添い、心から共感すること。

相手の立場に立って物事を考え、本当の意味で相手のことを理解しようとすること。

そこから生まれるメッセージこそが、人の心に深く響き、行動を促すのです。

コピーライティングは、ビジネスの成功に欠かせないスキルですが、同時に大きな責任も伴います。

あなたの言葉が、誰かの人生を大きく変える可能性を秘めているのです。

読んだ人が何を選び、どこにお金と時間を使うかも、あなたの言葉しだいです。心理学の考え方も、お客様をせかしたり、だましたりするためではなく、お客様を理解し、正しく伝えるために使うものです。

だからこそ、常にお客様の気持ちを考え、真摯に向き合うことが何より大切。

自分の人生を変えたい、もっと幸せになりたい。

そんな思いを抱えているお客様の心に、あなたの言葉が寄り添うことができたら。

それこそが、最高のコピーライティングなのかもしれません。

技術や知識は、そのための手段に過ぎません。

コピーライティングの本質は、人と人との心の交流。

一人一人のお客様の心に寄り添い、共感を生む言葉を紡ぐこと。

それこそが、あなたのビジネス、そしてあなた自身の人生をも豊かにする、最も大切なことだと私は信じています。

これからもお客様の感情を深く理解し、心に響くコピーライティングを追求し続けてください。

コピーライティングの学びに終わりはありません。

常に謙虚な姿勢で、人間心理と向き合い続けること。

それが、あなたの成長につながる最短の道のりになるはずです。

書き出したお客様の言葉を、AIと一緒に文章にしたい方へ

お客様の不安と理想、お客様が使う言葉を書き出したら、次は文章にまとめる段階です。無料の電子書籍「AI Webライティング」(約130ページ)では、ChatGPT・Gemini・Claudeの使い分け方、良質な文章を書いてもらうための9つのプロンプトの作り方、ブログ記事・販売ページの原稿を書いてもらった事例とテンプレート、AIに執筆を任せるときに必ず守る2つの注意点をまとめています。

AIの下書きは、そのまま使わず、事実と数字を確かめてから使ってください。お客様のメールなどをAIに渡すときは、お名前など、個人が分かる部分を消してからにしましょう。

メールアドレスをご登録いただくと、無料電子書籍のダウンロードリンクと、その後のお役立ち情報・弊社の講座のご案内をメールでお届けします。不要な場合は、いつでも解除できます。

この記事の心理学の説明は、2026年9月25日に、マズロー(1943年)、トヴェルスキーとカーネマン(1974年・1981年)、カーネマンとトヴェルスキー(1979年)などの論文、脳科学辞典(日本神経科学学会)、米国国立医学図書館で公開されている医学の資料、チャルディーニの会社(Influence at Work)の公式サイトなどで確認したものです。広告の決まりは、2026年9月24日・25日に、e-Gov法令検索(景品表示法・薬機法)と消費者庁・厚生労働省の資料で確認しました。ここでの説明は一般的なもので、法律の相談に代わるものではありません。

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お客様の不安と理想を文章の順番に落としこむ型(PASTORフォーミュラ)、キャッチコピーの8つのテクニックとパワーワード一覧(広告の決まりのNG例・OK例つき)、お客様の不安を取り除くオファーの作り方、コピーライティングの記事8本のまとめはこちらです。

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